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▼ 音読とシャドーイング
これで音読の重要性を少しはわかって頂けたと思います。
しかし,音読するには,英文を正しい発音で読めなければなりません。
間違った自己流の発音で音読していても効果は薄いのです。
では,どうするか。
ここではさらに突っ込んだトレーニング法を紹介しましょう。
「シャドーイング」という方法です。
聞こえてくる英文に影のように寄り添って読んでいくことから
「シャドーイング」と呼ばれています。
やり方は簡単です。
CDやテープから聞こえてくるネイティブの発音を,
そのままそっくりまねて発音していくのです。
発音するためには,神経を研ぎ澄ませて
英文に耳を傾けなければなりません。
そして,聞こえた通りに口に出して英語を発音していくのです。
このように,シャドーイングは耳と口を総動員する作業ですので,
短い時間でもかなりの効果が期待できます。
但し,下手をすると,ただの口パクで終わってしまう可能性があります。
単なる自己満足で終わってしまう可能性があります。
ですから,正しい方法でトレーニングすることが大切です。
どうすればよいのでしょう。
その具体的な方法が,次の本に詳しく述べられています。
究極の英語学習法 K/H システム(アルク)
「K/H」とは,この練習システムの考案者である
国井信一氏と橋本敬子氏のイニシャルからとったネーミングです。
お二人とも通訳者養成講座の講師として活躍されていました。
養成講座での豊富な経験をもとに,
お二人が試行錯誤を繰り返しながら作り上げた学習方法が,
このK/Hシステムです。
この本には,これでもかというくらい
緻密にシャドーイングの練習方法が書かれています。
この方法のすごいところは,
同じ教材を繰り返し繰り返し学習するというところです。
根本的な考え方は,國弘氏の言う「只管音読」そのものです。
この本では,その内容がさらに具体的に示されています。
しかも,練習の成果がはっきりと数値化されるようになっています。
どれくらい力がついているのかが一目瞭然なのです。
具体的には,次のようなステップを踏んで練習していきます。
ステップ1現状を把握する
一文ごとに自分の言葉で英文の意味を言い,
それを録音します。
訳例と照らし合わせて,
内容がどの程度あっているか確認します。
ステップ2音をつかむ
@力試し……シャドーイングを録音し,原文と照らし合わせて,
ミスの数をかぞえます。
この数字が出発点です。
A仕込み……英文解釈的に一つ一つの文を正確に理解します。
同時に音やリズム,イントネーションを確認します。
口慣らしをかねて,シャドーイングします。
B体得………100%正確にシャドーイングできるまで練習します。
ステップ3意味をつかむ
@力試し……一文ごとに自分の言葉で意味を言い,録音します。
その後,訳と照らし合わせて確認。
ミスの数をチェックします。
A仕込み……意味のかたまりごとに切った英文を聞いて,
その内容を確かめます。
B体得………意味のかたまりごとに
即座に日本語の意味が思い浮かぶようになるまで
聞き込みます。
最後には区切りなしの英文を聞いて,
理解できるよう練習します。
ステップ4音と意味の一体化
・音と意味が一体となり,
英語で英語を理解している感覚に近づけます。
ここでは「意味を考えながらのシャドーイング」が中心です。
最終的には日本語を介さず,
イメージとして英語が理解できるようになるまで,
繰り返し練習します。
以上のようなプロセスで練習を行います。
自分の声を録音し,それを原文と照らし合わせ,
ミスの数をチェックするという方法を取っているのは,
私の知っている限りではこのK/Hシステムのみです。
自分を客観的に厳しくチェックすることが,
このシステムの出発点となっています。
ですから,ある意味,こわい面もあります。
自分の現状が「ミスの数」という数値にはっきりと現れてしまうからです。
しかし,現状把握を抜きにしては,前進もあり得ませんよね。
トマティスの聴覚トレーニングもそうですが,
まずは現状をしっかりと把握し,
自分の弱点を自覚するということが,すべての出発点なのです。
また,このトレーニングでは,
同じ教材を何度も何度も繰り返して練習します。
その点で,基本的な考え方は
國弘氏の「只管音読」と共通するものがあると私は考えています。
シャドーイングの対象となる英文は,この本に収録されています。
異文化理解をテーマとした約4分間のスピーチが2本入っています。
このスピーチを使って音と意味が完全に一体化するまで,
何度も何度もシャドーイングします。
定期的に自分のシャドーイングを録音し,
ミスの数を折れ線グラフに記入します。
こうすることで,自分の力の伸びが視覚化されます。
練習を重ねるごとにミスの数が減り,
グラフが右下がりになります。
それが学習の励みとなり,継続しようという意志が強化されるのです。
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